医療現場におけるロボットの利用と将来について

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医療現場におけるロボットの利用と将来について

国内のロボットは自動車産業に代表される製造業の現場などにおいて進化し続けてきた。病院など医療機関においても、ロボットの技術は来院者向けの病院施設案内をはじめ近未来の手術治療に至るまでさまざまな用途で活用されつつある。
ここでは、今日の病院における課題の内、病院スタッフの負担低減を狙ったロボット活用方法について紹介したい。ロボットにより、人的リソースの代替を狙うものである。人が行う作業をロボットが行うことで、人的資源を適正に配置(最適化)できるとともに、昨今重要視されている医療現場での感染症拡大を防ぐ効果も期待できる。

ロボットがやれるのはどういったことか、どういったことが実現できそうなのか考えたい。

ロボットにより負担低減が狙えそうな、病院スタッフ業務

まずは、ロボットにより負担低減が狙えそうな、病院スタッフ業務をいくつか挙げてみる。

・受付(総合案内) ・会計(医療費自己負担額の清算) ・搬送(検体、配膳、アメニティー、廃棄物など) ・清掃 ・監視(来場者検温、非常連絡、巡回動画記録) ・調剤 ・リハビリ支援(会話交流)

と、多岐にわたる。

なお、手術や治療などの医療行為については、まだまだ研究の段階なので、本コラムではまだ扱わないこととする。

ロボットにより負担低減が狙えそうな、病院スタッフ業務

負担低減への解決策

次に、それぞれの解決策として、医療現場において実現できそうことや実現できていることと、課題について述べたい。

●受付(総合案内)

初診、見舞いなどの来訪者に対して、受付方法を案内する。ロボットの表示画面はタッチパネルとなっており、来訪者に対する簡単な質問および選択肢を表示し、来訪者は回答としてタッチ入力することで案内情報を見ることができる。さまざまなコンテンツを用意し、初診者向け、再診者向け、入院患者向け、見舞い者向け、病院紹介編、長時間診察待ち患者向けなど、利用者の目的に応じたコンテンツを提供する。利用者の状況に応じ音声も併用する。ロボット(機械)相手に話すことなど慣れない人にとっては効果が出にくいという課題があるが、好奇心の強い人にとっては便利に使えるだろう。待ち時間を持て余す患者にとっても役に立つかもしれない。

●会計(医療費自己負担額の清算)

患者の医療費自己負担額の清算、つまり診察後の会計は、スタッフを介さずに患者自身が自動精算機に対面し、クレジットカードなどで支払い処理を行う。病院にとっては人手不足の解消になり、患者にとっては待ち時間が減るといったメリットもある。自動精算機は、中~大規模な病院などではすでに普及しているところが多い。

●搬送(薬剤、検体、配膳、アメニティー、廃棄物など)

病院内で物の搬送を行うロボットであり、床面とタイヤで接し自走することで病院内を移動することができる。荷台があり、搬送する対象物を載せることができる。薬剤、検体、配膳、アメニティー、廃棄物などが対象となる。人や障害物に出会った時は一時停止する。周囲の安全を確かめながら病院内の廊下や部屋の中を移動する。エレベーターと連携することで、別フロアへ移動することもできる。定期的、規則的な搬送業務に、ロボットは大いに活躍できる。課題としては、通行の邪魔にならないよう、小型化が望まれるだろう。

●清掃

病院の廊下などの清掃を行う。床のごみ拾いや拭き掃除を行うことができる。搬送と同様に障害物や人に注意しながら自走式で病院内を移動することができる。ただ、決められた通りのルートを移動するのは得意だが、古い建物の場合など、フロアの段差や仕様の異なる扉など不規則な条件があったりすると、そこは避けて限られたルートしか移動できないといった課題は残る。

●監視(検温、非常連絡、巡回動画記録)

病院内を巡回するロボット。清掃と併用することもでき、可能な限りの院内を隅々まで監視する。人物の検知、検温、動画撮影を行うとともに、ナースコールの代替連絡など非常時の活用も期待できる。

●調剤

処方箋に従い薬を取り分ける作業や調剤作業を自動的に行う。調剤ロボットといわれる。

●リハビリ支援

音声やタッチパネルで、患者の話し相手になる。AIや温度測定技術、顔認証データベースなどと連動させ、バイタル管理やカウンセリングを行うなど応用範囲は広い。

これらの多くは実際に運用が始まっている。特に搬送については運送業や流通業の現場(倉庫や中継所)では早くから普及しており、そのほか工場やオフィスなど、さまざまな業界で広く利用されつつある。

負担低減への解決策

医療現場に期待されるこれからのロボットと情報ネットワークシステム

医療現場に期待されるこれからのロボットについて取り上げ、情報ネットワークシステムの役割についても触れておく。

・感染症などの隔離が必要な患者に対する投薬や食事の提供、問診(遠隔監視)、病変通知を看護師に代わりAI搭載のロボットが担う。常時接続された情報ネットワークシステムを経由して、適時、患者の状況を把握することができる。

・要介護者(特に体重が重い場合)の介護にロボットを活用し、介護者に代わって介助あるいはその補助を担う。介護の内容や頻度などのデータを収集し活用するなど、今後の高齢化社会を支えるのも情報ネットワークシステムの役割だ。

・医療行為としての診断、治療指導(生活習慣病など患者自らの行動変容への指導、アドバイス)を担うソフトウエアを搭載したロボットと、データを保管する情報ネットワークシステム。

・将来の医療研究を踏まえた医療情報のデータベース化、および情報の一元管理を担うロボット。データベース化して情報の一元管理を実現するためには、現場で看護士など医療スタッフの手間がかからないように、ロボット導入段階から医療情報をデータベースに蓄積するしくみを作っておくといった情報ネットワークシステムとの連携が欠かせない。

しばらく続く超高齢化社会において、医療分野の役割は高まる一方で医療従事者の労働環境は人手不足により悪化し続けている現状がある。日本ではhinotori™や、ダビンチが導入されるなど、医療用の手術ロボットの普及が進んでいる。今後、医療現場に期待されるロボットの技術が進化していくとともに、今後も医療分野においてロボットの活用は多岐にわたり発展していくと考えられる。しかし、普及に伴う新しい課題や問題点も同時に増えることが予測され、情報ネットワークシステムの役割も重要となっていくだろう。

2022/1/28 HCNETビジネス推進グループ担当Y

医療現場に期待されるこれからのロボットと情報ネットワークシステム

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