国立大学法人 筑波大学 様
遠隔講義・自動収録配信システムをクラウドで構築
他のクラウドサービスとの連携と
使い勝手の良さを実現
- 文教
- ビデオ/Web会議
国立大学法人 筑波大学 様
ポイント
- 講義の収録システムおよび配信システムのクラウド移行で運用性を向上
- 旧システムの使い勝手を保ちつつ、新たなシステム連携も実現
- 提案から構築まで一貫サポート、更新プロジェクトを予定通り完了
導入製品
他大学とのプロジェクトで
動画収録・配信システムを構築
日本有数の学術都市である筑波研究学園都市に、広大なキャンパスを構える国立大学法人筑波大学。同学の教育・学習に関するシステムやコンテンツを管理しているのが、学術情報メディアセンター 教育クラウド室だ。主な担当システムとしては、LMS(Learning Management System:学習管理システム)や遠隔講義・自動収録システム、オープンコースウエア(大学などで正規に提供された講義と関連情報をインターネット上で無償公開する活動)などがある。
講義の動画収録・配信システムは、国立大学法人鹿屋体育大学との共同専攻プロジェクトをきっかけに構築された。離れた場所にある大学が共同で1つのカリキュラムを運営するには、遠隔講義システムや講義動画の配信システムが必要だ。教員や学生たちに負担をかけず、教育クラウド室の限られた人員で安定して運用できるしくみをめざしたという。
本システムは、事前に予約した時間に、教室内のカメラやマイク、収録用の装置などが起動して、自動的に講義収録や遠隔授業が開始される。講義の板書やプロジェクター出力映像なども収録でき、コンテンツはLMSに自動で登録されるなど、教職員や学生にとって非常に扱いやすいと評判だ。
「教育クラウド室は、授業を円滑に進められる環境整備を心掛けています。動画収録・配信システムは、ユーザーに負担がかからないため教職員からの評価が高く、ずっと使われ続けています」と、教育クラウド室長の木村成伴准教授は語る。
老朽化に伴うシステム更改が必要に
使い勝手の維持など多くの課題に直面
動画収録・配信システムは大学説明会や遠隔会議など、さまざまな用途に活用されていた一方で、機材の老朽化などの課題が大きいため、教育クラウド室が更改を進めてきた。
まず着手したのは、保守切れとなる物理サーバーの更改だ。動画収録・配信システムの構築時は学内に専用のサーバーを導入し、オンプレミス環境で稼働させてきた。しかし、他のシステムでクラウドを使う機会が増えたことで、動画収録・配信システムもクラウドへ移行することにした。
「オンプレミスとクラウドのどちらを使うかは、学内のICT環境を統括する学術情報メディアセンターがシステムごとに判断しています。動画収録・配信システムのサーバー更新の際は、サーバー老朽化の問題や故障リスクを避けたい、更新予算を抑えたいという理由で、学外のクラウドサービスを使うことにしました」と、阿部洋丈准教授は説明する。同学は、学内ネットワークおよび学術情報ネットワーク「SINET」との接続性、可用性やサポート体制、コストなどを総合的に勘案してサービスを選定し、2019年にクラウド移行を完了させた。とはいえ、他にも老朽化・保守が終了した機材は残っており、教育クラウド室は引き続き更改を検討しなければならなかった。
旧システムにおける課題の1つは、収録専用のハードウエアが各教室に必要だった点だ。拡張にはハードウエア調達や設置作業などのコストが発生する上に、機材トラブルなどが発生すれば、教育クラウド室の教職員が現地へ行かねばならないなど、運用上の負担もあったという。
また、旧システムが高評価されていただけに、使い勝手の良さをできるだけ損なわないしくみも重要となる。また、新型コロナウイルスの流行を受けて、筑波大学ではZoomで遠隔講義を行っていたため、動画収録・配信システムの更改には、Zoomとの連携性も求められた。
「現在はコロナの感染状況に応じてオンライン授業と対面授業を使い分けており、対面授業では3密対策の一環として教室に入る学生数を制限しています。教室に入りきれない学生や入国制限で日本に来られない留学生などは、遠隔授業を余儀なくされます。こういった事情から、授業をWeb会議ツールで配信するケースが非常に増えています」(阿部准教授)
必要な機材やコストを最小限にとどめつつ
システムの使い勝手も維持
教育クラウド室はこうした課題への対策を検討し、初代の動画収録・配信システムの構築やクラウド移行などを手掛けたエイチ・シー・ネットワ-クスに相談した。
「初代のシステム構築時は広いキャンパスの各所に機材を分散配置するため、スケジュールを心配していましたが、エイチ・シー・ネットワ-クスは予定通り進めてくれました。その後も追加要望やクラウド移行の際に柔軟な対応をしてくれています。そこで今回も同社に相談しました」と阿部准教授は語る。
エイチ・シー・ネットワ-クスは、パートナー企業とも連携しながら筑波大学の要件を踏まえた提案を行った。配信システムにはフォトロンの「CLEVAS」、収録システムには同じくフォトロンの「Spider Rec」を採用。これらをZoomやLMSと連携させてコストや運用負担軽減、使い勝手の維持などの要件を満たすことが狙いであった。このシステムは引き続きクラウド上で稼働させており、オンプレミスのサーバーは必要ない。マイクやカメラなど最小限の設備のみで利用できるため、初期費用やメンテナンス費用も軽減できる。
同学は共同専攻などを円滑に行えるよう、一部の教室には高度な機能を備えたビデオ会議システム「Poly G7500」を採用。PolyG7500は操作性やリアルタイム性に優れ、Zoomとも連携できるため、共同カリキュラムにも効果を発揮すると期待されている。
「エイチ・シー・ネットワ-クスは、教室に設置する機材を最小限にとどめ、コスト低減やメンテナンス負荷軽減に配慮してくれました。ZoomやLMSとの連携も、フォトロンに製品を改修してもらうことで実現しています。初代と同様に、今回も導入前からさまざまな説明をしてくれたので、構築も安心して任せられました」(阿部准教授)
ユーザーニーズに応え続けて
時代に即した授業のあり方を模索
遠隔講義のメリットが教職員や学生に広く認知されたことで、対面授業が再開されても、遠隔講義の選択肢を用意するケースがあるという。
「例えば、学生たちから人気の高い講義では、教室の定員を上回る数の受講希望者が集まることがよくあります。抽選で受講者を絞り込んでいましたが、遠隔講義によって希望者が全員受講できるしくみも整えられそうです。本学では『科目ジュークボックス』(CJ:Course Jukebox)システムを提供しており、協定校の学生や、その他の履修生が受講できる対面授業や遠隔授業の情報を公開しています。こうした取り組みが、筑波大学の国際的な認知を広げることにもつながっているのです」(木村准教授)
今回の動画収録・配信システムの更改では、設置対象の教室数はまだ一部であり、今後もさらなる充実が期待されている。また、使い勝手の側面からも、旧システムを完全に再現できていないところがあり、その改善も図っていくという。阿部准教授は、今後の課題とそれに対するエイチ・シー・ネットワ-クスへの期待を、以下のように語る。
「現在はキャンパス内の地区ごとに最低1つの教室に新システムを導入していますが、利用が拡大すれば増強が必要でしょう。また、新システムをより使いやすくするには、収録中かどうかをわかりやすくすることが望ましいと考えています。今後は、教職員や学生たちのシステムの使い方を見極めつつ、必要に応じた改善を随時行っていかねばなりません。こうした対応においても、エイチ・シー・ネットワ-クスには引き続き、信頼感ある仕事を期待しています」
お客様情報
国立大学法人 筑波大学 様
日本初の高等教育機関として1872年に創設された師範学校を祖とし、1973年に新構想大学として誕生。あらゆる面で"開かれた大学"となることを建学の理念に据え、従来の観念にとらわれない"柔軟な教育研究組織"と、次世代に求められる"新しい大学のしくみ"の実現をめざしている。