ネットワークの設計

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ネットワークの設計

ネットワークの設計とは、ネットワークインフラに求められる要件を具体的な設計書、提案書、スケジュール計画書にする作業であり、技術的な知識はもちろんのことであるが、関係者とスケジュール調整するなどのコミュニケーション能力、さらには状況変化に応じた適応力も必要となる。設計というと、最終的には設計書をつくることになるのだが、ネットワークを利用する側つまり顧客やユーザーといった相手がいるので、順序としては、まず相手と何をどうしたいのかなどの要件を整理し、設計者が提案書をつくって相手に提示することから始まる。ネットワークの設計に限らないが、設計する者は相手と合意形成するに至るまでに内容を具体的にまとめた提案書をつくる必要がある。その内容はお互いの希望をぶつけ合う交渉の場をもって何度も修正が入ることだろう。
提案が通れば、真っ先に計画を掲げてプロジェクトをスタートさせ、具体的な設計、構築作業や組み合わせ試験方法の策定、保守設計、スケジュール最終調整と進めたい。
ネットワークの設計について、提案から構築スケジュール調整まで説明する。

提案書

まず提案書だが、これは一般的に次の項目が含まれる。

●要件整理

現状の問題点、課題、諸条件、要望など。例えば無線Wi-Fiで接続したいパソコンやスマホの台数、通信速度、利用したいシステム、セキュリティ方法などを明確にしておく。最初であるが最も重要といえる。

●設計概要

構成概要や設計方針。細かいことはまだ後回しでいい。

●費用

ハードウエア費用、ソフトウエア費用、工事費用などの一時費用、保守や運用などにかかる運転費用。抜け目なく算出したい。

●効果予測

経費削減効果、環境改善効果、事業継続、付加価値向上など。慎重に分析する。

●体制

構築体制、保守運用体制など。これも費用にかかわることなので、あらかじめ丁寧に検討したい。

●スケジュール

現実的な時間配分を大まかに提示する。

提案書

基本設計

基本設計はネットワーク構成の根幹となるものであるから、後々変更することが無いようにしっかり固めておきたい。

●基本構成図

全体像がわかるものでなくてはならない。ネットワークは階層になることが多いので、それが読み取れるように配置する。見やすくするために多数存在する機器やシステムなどはグループ化してまとめて表現すればいい。接続する既存システム、既存ネットワーク、他のシステムなども記載する。規模の小さい要素であっても見落としの無いよう何らかの記述は入れておきたい。できれば拡張性を踏まえた構成にしておきたい。顧客、ユーザーはもちろん、このネットワークを利用する関係者が見ても納得のいくものにしたい。

●セキュリティ

どのようなセキュリティ方式を取り入れるのか。認証であれば認証方式、スイッチのポートなら、どう制御するか、トラフィックの中身まで見るかどうかなど。狙われるようなことは当然だがあえて記載しない。

●WAN接続

取り合いになる部分なので、ルーティングプロトコル、物理速度などは明確にしておく。

●組み合わせ試験

ネットワーク経由で実現させたい通信の内容と試験方法を決めておく。特に他システムとの組み合わせ試験については後のスケジュールに影響の無いように早めに明確にしたい。

●全体設計

IPアドレス設計、冗長構成の範囲を決めておく。

●保守設計

保守体制の概要として連絡体制図を準備しておく。

基本設計

詳細設計

●詳細構成図

すべての機器、システム、ケーブル類がどう接続されるのかがわかる結線図あるいは接続表を作成する。接続する既存システム、既存ネットワーク、他のシステムなど、基本構成に載せたものは網羅する。

●数量表

納入物品一覧表などと呼ぶ場合もある。使用する機器やソフトウエアの数量一覧表のこと。

●取り合い部分

WANや既存ネットワークシステムなど、他と接続するインターフェース仕様(プロトコル、物理速度、IPアドレスなど)を明確にする。

●IPアドレスなど各種設定

端末、各種サーバー類、L2SW、L3SWの設定パラメータとして、ホスト名、IPアドレス、VLAN ID、VLAN名、ポートアサインなど、設定に必要なすべての項目について設定内容を決める。

●作業手順書

当事者が見てわかるものであることはもちろん、責任者が見てチェックできることが求められる。現地でネットワークを構築する際の時間割に相当する作業手順を作成するのだが、不測の事態が発生した場合の対処に要する手順も含めておく。

●組み合わせ試験方法の策定

ネットワーク要件を満たすことを確認できる試験方法を決めておく。特に他システムとの組み合わせ試験については協力業者などとの連携を踏まえ、綿密に計画を立てておく。

●監視設計

運用開始後に行う通信を監視する項目、機器の監視、SNMPトラップなど、監視システムの設計を明確にする。

詳細設計

スケジュール調整

関係者の意識合わせとして、食い違いの無いように全体のスケジュールを明記した計画書を作成し、共有しておく。次に挙げる各日程を決める。ネットワークエンジニア、システム開発エンジニア、それぞれ関係者とのコミュニケーション能力が欠かせない。

・プロジェクト決定(≒受注日)
・詳細設計(ネットワークエンジニア、システム開発エンジニア)
・事前検証(起こりそうな心配事を事前につぶしておく)
・WAN回線工事(協力業者)
・光工事(ビル縦配線)
・フロアLAN工事(横配線)
・機器設定(事前設定、現地設定)
・構築(設置作業)
・通信テスト(関係者立ち会い)
・運用スタート(保守開始)

保守体制

保守連絡体制図を明確にする。特に障害発生時の対応については、対象物、対象時間、連絡先を明記した保守条件書を作成しておく。

保守体制

異常発生時の対応

トラブルなど不測の事態が発生した時の連絡先を明確にしておく。異常発生のリスクをできるだけ多く挙げておき、対処方法も考えて明記しておく。

ネットワークの設計について、提案から構築、通信テスト、異常発生時の対応まで一気に説明した。これでもほんの一部にすぎないことはネットワークエンジニアなら間もなくわかるだろう。
筆者もそうだったが、書くのか苦手だから設計書は嫌いな作業であった。すべて頭に入っているものを書くのは面倒だからだ。ただ、人間はいつか忘れる生き物だから、詳しく理解している時にきちんとドキュメントとして残しておきたい。

2022/2/21 HCNETビジネス推進グループ担当Y

異常発生時の対応

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