株式会社 共同テレビジョン 様
2拠点間をセキュアな閉域ネットワークで直結
テレビ放送用の高精細映像データを短時間で安全に伝送
- 企業
- ネットワーク
- サービス
株式会社 共同テレビジョン 様
ポイント
- コストを抑えた10Gbpsの帯域保証型専用回線を構築
- 柔軟性の高いL2ネットワークで運用が容易
- 24時間365日の常時監視サービスで万一のトラブル時も安心
導入製品
物理メディアを手渡しで運ぶ業界の風習 時間とコスト、セキュリティに課題
株式会社共同テレビジョン(以下共同テレビジョン)は、国の特別名勝・特別史跡 浜離宮恩賜庭園の景観を眼下に収める中央区築地のオフィスビルに本社を構える。ニュース配信会社としてスタートした同社は、ドラマやバラエティー番組をはじめCM制作、イベントの企画・運営なども行う総合制作会社だ。映像制作の企画・撮影に関わる「プリプロダクション」業務から、撮影後のナレーション録りや編集といった「ポストプロダクション」業務まで一貫して行えることが特徴だ。また4K対応の大型中継車を導入するなど、最新の映像技術にもいち早く対応している。その高い技術力が評価され、地上波、BS、CSテレビ各局から技術協力を請われているが、テレビ業界には映像データのやり取りに特殊な事情があるという。
「テレビ業界は、今でもテープやカートリッジなどの物理メディアを使っています」と、共同テレビジョン 技術センター 映像制作部専任部長 溝口健志氏は語る。そのため撮影した映像を編集する際には、映像制作部の置かれた築地本社から編集室のある港区台場拠点へ、メディアを物理的に移動させる必要があった。テレビ局へ納品する際もメディア自体を届ける必要がある。
「放送前の大切な映像のため、メディアを紛失・破損することはあってはならないことです。また放送時間までに必ず届ける必要もあります」と溝口氏はその重要性を説く。そのため、スタッフが電車やタクシーに乗ってメディアをハンドキャリーしている。当然時間のロスが大きくなり、本来の制作業務に充てるべき時間を圧迫しているという。
また映像制作部とは別に、コンテンツバンクと呼ばれるアーカイブ事業も発足した。これは、HDCAM/HDCAM-SRシリーズの補修用部品の提供を含め、保守に関するサービスが2023年に終了すると発表されたことに端を発する。「業務用VTR本体の製造が終了し、その後はメンテナンスもできなくなります。そのため映像資産を永久保管する必要性があったのです」と、共同テレビジョン システム管理室 室長 富澤茂明氏はその背景を語る。テープに記録された映像を順次デジタイズ(デジタルのデータに変換する作業)して、オプティカルディスクアーカイブ®などに永久保管するのだ。
コンテンツバンク用の機材は築地本社に設置されたが、台場拠点にも過去の映像テープの多くが保管されている。ここでもテープの受け渡し方法が問題になった。ハンドキャリーでは紛失・破損のリスクと移動コストが付きまとう。そこで、築地本社と台場拠点を専用のネットワークで結び映像を伝送しようという構想が持ちあがった。しかし、放送用の映像データを伝送するには、さまざまなクリアすべき課題があったという。
大容量映像データを高速・安全に伝送できる10Gbpsの専用回線
1時間の放送用映像データは約25GBもの大容量になる。また、伝送中に劣化することや外部流出するようなことがあってはならない。そのため、専用の回線に求める要件は非常に厳しいものになる。「大容量データ伝送のため十分な帯域が確保できること」、「セキュリティが担保でき可用性も高いこと 」、「24時間365日のサポート体制があること」、「そのうえでコストを極力抑えること」、「保守にも多額の費用がかからないこと」といった具合だ。当初はクラウド型のストレージサービスも検討したというが「サービス提供者の顔が見えないので、放送前の映像をあげるのに不安を感じました」と、富澤氏は振り返る。そんな折、エイチ・シー・ネットワークスからクローズドネットワークであるイーサネット専用回線のサービスが提案された。
「セキュリティを考えたら専用線がいいのでしょうが、コストが折り合いません。しかし閉域網サービスの多くは、予備回線や保守サービスを別途組み合わせる必要がありました。その点エイチ・シー・ネットワークスのサービスは10Gbpsの広帯域、可用性が高く予備線が不要、保守サービスも込みなのに低コストと、弊社の要望を満たしていたのです」と、富澤氏は導入の経緯を振り返る。
約3カ月の導入期間を経て2019年の2月末に稼働をはじめたイーサネット専用回線は、築地本社と台場拠点を、10Gbpsの帯域保証型専用回線で直結している。インターネットや他のネットワークとは物理的に分離されたクローズドネットワークのため、専用線と同等のセキュリティを確保できる。またサービス両端の設備には通信キャリアで採用されている高品質な製品APRESIA® XGMC-2101XPSRを使用している。
富澤氏は「拠点間を直結しているので、セキュリティ面での心配は全くありません。ゲートウェイなどの設備も不要です。しかもL2ネットワークなので社内LANの延長のような感覚で、非常にシンプル。管理者に高度なITリテラシーも必要がありません」とそのメリットを語る。
映像制作部用のサーバーには、L2スイッチと社内VLAN経由で接続している。コンテンツバンクと映像制作部で回線を共有しているのだ。
「アーカイブ映像の伝送と同時に映像編集作業の伝送を行っていますが、最大スペックでデータを流していてもまだ余裕を感じます。まるで回線が10本あるような印象です。もちろんパケット落ちなどもありません」と、溝口氏は笑顔を見せる。
また、このサービスには監視用の回線もセットされたネットワーク監視サービスも含まれており、常時エイチ・シー・ネットワークスで回線状況をモニタリングしている。万一トラブルが起きた際には、お客様拠点に設置されたパトランプが点滅して知らせるとともに、エンジニアが駆けつけ対応する。
「専用の監視回線までサービスに含まれているとは思わず、うれしい誤算でした。今のところパトランプが点滅したことはありませんが」と富澤氏はほほ笑む。
24時間いつでも映像受け渡しができ働き方改革にも貢献
導入メリットについては「メディアの受け渡しに時間を費やす必要がなくなり、映像をすぐに利用することができます。短縮できた時間をクリエイティブな作業に充てることができるということは大きいですね。築地本社で収録された映像をサーバーに入れておけば、台場の編集室で24時間いつでも編集作業ができる。場所と時間の壁を取り払うことができ、働き方改革にもつながります」(溝口氏)。「現場の負担が減ることで制作のスピードがあがる、それが起爆剤となって社内全体に化学変化を起こすことも期待できます」(富澤氏)とその波及効果の大きさを語る。
また副次的な利用方法として、台場拠点に無線LAN環境を構築する際にこの閉域網を活用することができたという。築地本社と台場拠点がL2ネットワークでつながっているということは、社内LANを延長することも可能である。そのため、新たに別のネットワークを用意することなく無線LAN環境を構築できたのだ。「このように想定外の利用に対しても柔軟に利用でき追加費用はLANケーブル代だけ、ポリシー共通化も簡単など、イーサネット専用回線は良いことづくしです」と、富澤氏は満足気に語る。今後は4K放送8K放送で素材の大容量化が広がる見込みであり100Gbps専用回線へのさらなる拡張を視野に入れているという。
課題だった映像の伝送手段を一気に解決し、高速化、効率化を実現した共同テレビジョンは、これまで以上に高品質な映像作品を生み出し続けるだろう。
お客様情報
株式会社 共同テレビジョン 様
1958年に株式会社共同テレビジョンニュースとして創立。ニュース、ドラマ、ワイドショーなどのテレビ番組や映画、CMなど各種映像の企画、制作を行う総合制作会社。常時50班のENG(Electronic News Gathering)取材チームや4K中継車を有する高度なプリプロダクション機能と、ビデオ編集、MA、DVD・BDなどのパッケージングまで行うポストプロダクション機能を有している。