自治体 新庁舎ネットワーク導入
福島県 会津若松市 様
「dX アクションプラン」の集大成となる新庁舎へ
職員の多様な働き方を支えるネットワーク機材を納入
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多様な働き方の実現を目指し新庁舎全館に無線LANを整備

福島県会津地域の中心地、会津若松市。中世から蘆名氏が城を構えており、戦国時代には伊達政宗や蒲生氏郷、上杉景勝など有力な大名が支配した歴史がある。会津藩の政治の中心だった会津若松城(鶴ヶ城)は、戊辰戦争で損傷し明治初期にすべての建物が取り壊されたが、1965(昭和 40)年に天守閣の復元を果たし、2011(平成 23)年には屋根瓦を幕末当時の赤瓦に再現。現在では市を代表する観光スポットになっている。市域は、東は猪苗代湖、南は会津盆地の南側山地にも及び、多彩な自然環境にも恵まれている。その歴史や風土、多彩な伝統工芸や名産品、食文化などが広く知られており、観光業も盛んだ。
そんな会津若松市では近年、行政のデジタル活用に力を入れている。直近では、2022(令和 4)年度から 2025(令和 7)年度にかけての 4 年間の計画で、「会津若松市庁内 dX アクションプラン」に取り組んできた。その一環として行政のデジタル化を加速させるべく、「行政手続きのオンライン化」「AI・RPA の利用促進」といった、具体的な計画を挙げて重点的に取り組みを進めている。
会津若松市役所 企画政策部 情報戦略課 庁内dX 推進グループ主査の栗城 健太氏は、dX アクションプランについて、こう説明している。
「 dX アクションプランの『dX』は、d が小文字となっています。この表記は、アクションプランの主眼は行政の業務変革にあって、デジタルはその手段にすぎない、といった考え方を示したものです。2025 年 5 月にオープンした新庁舎は、本アクションプランの一つの区切りとも言えるもので、デジタル化を支える様々な設備も取り入れています。例えば、市民にとっての利便性向上と職員の負担軽減を図り、総合受付には AI を活用した多言語対応の AI 総合案内端末も設置しました。また、生成 AI を活用した電話対応システムを 2025 年 6月から試験運用するなど、今後も積極的に取り入れていこうとしています」
会津若松市の新市庁舎は、1937(昭和 12)年に建設された旧館部分を保存しつつ活用、新築部分には旧館と共通性のある外観デザインを取り入れ、かつ旧館を含む建物全体を免震化、電気室や機械室を水害に備え上層階に配置するなど、各種災害への備えを盛り込んだ設計となっている。旧館は市民ホールや市議会議場などとし、新築部分ではそれまで複数庁舎に分散していた行政機能の多くを集約、市民が行政サービスを利用しやすい環境を実現。新庁舎の職員執務室は地震被害低減のため無天井化したほか、コアスイッチや各フロアのLAN 配線を集約するフロアスイッチを冗長化して、かつ停電に備えてUPS を配備している。各デスクの有線 LAN に加え、無線 LAN 環境も全館に整備されている。
「 職員の PC も昨年度からモバイルノートに入れ替えてきましたので、自分の席では有線 LAN、会議室などに持ち出して使うときは無線 LAN を使い、庁舎内どこでも場所を問わず仕事ができる環境を整えました」(栗城氏)
このように新庁舎によって柔軟な働き方を実現しつつある同市だが、旧庁舎の時代にはエッジスイッチなどの死活監視で、部署内の IT 人材の力を借りることが少なくなかった。

庁内dX推進グループ 主事
野崎 竜太氏
「旧庁舎は OA 化以前に作られた建物ですから、ネットワークは後から必要に応じて延伸されており、複雑な環境となっていました。死活監視のできない安価なスイッチングハブも多数使用されていたため運用性にも難があり、障害対応や設定変更などを行う際にも、まずは現場に行って現状を調べてから作業しなければなりませんでした。」(栗城氏)
扱いやすい WebUI やマルチベンダー対応などを評価しエイチ・シー・ネットワークスを導入

庁内dX推進グループ 主査
栗城 健太氏
今回整備した新庁舎のネットワーク環境について、これまでの課題を踏まえネットワークの構成はシンプルで扱いやすいものとし、特定のベンダーに制約されず複数メーカーの機材が混在していても容易に管理できるような環境を目指して設計したという。
こうして実現した現在の会津若松市のネットワークには、エイチ・シー・ネットワークスが提供する製品がいくつも採用されている。その一つが、ネットワークの根幹を支える認証アプライアンス(仮想版)だ。新庁舎の計画が着々と進みつつある 2022 年、各執務室への卓上型無線LAN アクセスポイントの配備に合わせ、Account@Adapter+VA が採用された。
「 この頃には、庁舎内にあったサーバーのほぼすべてを外部データセンターへ移していました。サーバーは主に仮想環境上で運用しているのですが、これまで使ってきた認証サーバーが市で採用した仮想化基盤に対応しておらず、新たな製品を選ぶ必要に迫られたのです。メーカーにも問い合わせるなど、様々な視点で検討した結果、機能面と仮想化基盤への対応を踏まえ、Account@Adapter+ VA を採用することとしました。従来のものに比べ、クライアント証明書を一括配付でき、負担が軽減され、管理もしやすいと感じます。」(栗城氏)
新庁舎のネットワークは、それまでの庁舎では会議室や執務エリアのみ導入にとどまっていた無線 LAN を全館に展開しつつ、有線 LAN も併用するという構成だ。栗城氏は、前述の「シンプル」「扱いやすい」「マルチベンダー管理」などの方針に基づき、機材それぞれの要求仕様をまとめ、製品の調達を実施した。
執務室などの" 島" に置くエッジスイッチに採用されたのは、ApresiaLightGS 110GT-SS だ。MAC アドレスに基づくダイナミック VLAN 管理に対応し、Web UI での管理が可能といった条件から採用に至った。新庁舎では現在180 台が稼働している。
さらに、ネットワークの管理用ソフトウェアとして、AN-ManagerStation を採用することで、新庁舎のネットワーク機器の設定や死活監視を一括で行っている。

WebUI による状況可視化を実現
内製運用による安定稼働も可能に
「新庁舎のネットワーク機器の設置は、新庁舎の工事が完了し引き渡しが終わった4 月から移転開始作業の始まるゴールデンウィーク前までに完了する必要がありました。LAN ケーブルの配線は工事に含まれていたものの、機器の設置・動作確認を一カ月程度で行わなければならず、タイトなスケジュールとなっていました。」(栗城氏)
移転作業を見越し、サーバー機器のデータセンターへの仮想化・集約を行っており、移転に伴いサーバー機器を物理的に移動させる必要がなく、新庁舎への移転を容易にした。また、新庁舎への移転前から Account@Adapter+ VA を使っているうえに、新庁舎では無線 LAN 環境整備を先に進めたことで、移転期間中から無線 LAN による業務ネットワークの確認を進めることができた。
「それでも移転作業はゴールデンウィークの4 日間のみで行い、翌平日には開庁というスケジュールとなっていました。理論上のテストは実施しているものの、移転前日まで稼働している700 台弱の機器を4 日間で移設、ネットワークの設定変更や動作確認を完了させることには最後まで不安が残りましたが、何とか無事に開庁を迎えることができました。現在も大きなトラブルはなく、安定して稼働を続けています」(栗城氏)

宮崎 正人氏

庁内dX推進グループ 主幹
伊藤 文徳氏
ネットワークの管理、運用を行う中で、ApresiaLightの WebUI の扱いやすさ、AN-ManagerStationのマルチベンダー対応についても効果を実感しているという。
「できるだけ軽易な設定変更やトラブル対応も職員自身で対応するようにしていますから、機器の扱いやすさは作業性に大きく関わってきます。その意味で、ApresiaLight の WebUI は状況を確認しやすくて良いと感じています。ログインすれば、どのポートがどうなっているのかすぐわかりますし、設定変更なども WebUI で一通りできます。
実は新庁舎の移転の中で機器の設定に不備があることがわかり、すべてのエッジスイッチの設定を修正する必要がありましたが、UI からの画面遷移を指示することで手分けして対応ができました。コマンドラインでの対応が必要な機器であったなら、こうはいかなかったと思います。AN-ManagerStation では、ApresiaLight に加え別メーカーのコアスイッチからの設定情報なども取り込んで管理ができ、マルチベンダーの管理を実現できています」(栗城氏)
基幹系システムのガバメントクラウド移行を実施予定
会津若松市の新庁舎のネットワーク整備はいったんの区切りを迎えたが、今後は dX アクションプランの施策の一つであるガバメントクラウドへの移行を控えている。数々の基幹系システムを2025 年度内に移行する計画で、これまで業務標準化など、移行に向けた準備作業が進められてきた。新庁舎のネットワークが問題なく稼働し、各部署の職員たちの業務に支障が生じない環境を作れたことは、その移行作業を円滑に進めるうえでも重要だったと言えよう。
「どの取り組みを進めるうえでも、今はネットワークがなければ何もできません。ネットワークの安定稼働は、行政サービスを継続するためになくてはならないものですが、限られる人員の中でより効率的に維持管理を行っていく必要があります。ガバメントクラウドへの移行や、今後セキュリティモデルの見直し等も検討しており、ネットワークの重要性はますます高まっていくと思います。」(栗城氏)
お客様情報
福島県 会津若松市 様

左から 野崎様 栗城様 宮崎様 伊藤様
会津若松市は、会津藩の城下町として発展した歴史と文化が息づく自治体。人口約 11 万人を擁し、農業や観光が盛んであり、都市機能も充実している。鶴ヶ城や白虎隊のゆかりの地として広く知られ、伝統を大切にしながら新たな産業も育まれる活気ある地域だ。豊かな自然に包まれつつ、利便性の高い都市環境が調和しており、移住先としても年々注目を集めている。