三重県度会郡 南伊勢町 様

地震・津波被災を想定した災害情報伝達システムを
4.9GHz無線LANで構築

  • 官公庁・自治体
  • 無線LAN
三重県度会郡 南伊勢町 様

三重県度会郡 南伊勢町 様

ポイント

  • 天候に左右されにくい、安定した災害情報伝達システムを構築
  • RADWIN 2000により、最長23kmの長距離通信を実現
  • 高音質のIP音声通話が実現

導入製品

官公庁・自治体のセキュリティネットワーク事例集

海に囲まれた町ゆえに南海トラフ大地震・津波への対策が急務

南伊勢町
町長
小山 巧 氏

 三重県度会郡 南伊勢町は、伊勢志摩国立公園の一角を占め、熊野灘に面したリアス式海岸の美しい景観を誇る風光明媚な町である。水産業が盛んで、鰯や鯖の水揚げ量は全国トップクラス。「大伊勢海老」や「伊勢まぐろ」といった、南伊勢ブランドの特産品を多く出荷している。農業においては、温州みかんの「内瀬みかん」「マルゴみかん」や、幻の柑橘と呼ばれる高級みかん「せとか」などの有名品種の産地として名高い。

 南伊勢町長の小山 巧氏は、豊かな自然がもたらす特産品の数々に胸を張る一方、その地形がゆえの悩みも明かす。「南伊勢町は、その約1/4が海岸線です。町民の住む38集落のうち33集落が海から近い場所に密集しています。そのため、地震による津波への対策が急務でした」と、危機感を露わにする。南海トラフを震源とする巨大地震の発生が懸念されているいま、地震・津波への対策は、海辺の町、南伊勢町の最重要課題として取り組む必要があった。


 町内に既設されている通信会社の基地局は、浸水予想地域にあるため、ひとたび津波に襲われれば、長期間に渡り通信回線が途絶えてしまう可能性もあるという。「災害時には食料や生活用品なども必要ですが、情報がないと、なにも行動ができません。まずは通信を確保することが最優先だと考えていました」と、小山町長は防災対策の方針について語る。
 従来から町内には防災行政無線を整備していたが、南伊勢町役場 防災課 防災係 係長 瀬古智秀氏は「従来の防災無線だけでは仕事が継続できません。データの送受信ができないと、用をなさないのです」と、その課題を語る。そのため「災害時の通信を確保する情報伝達システムの整備を、町独自でするしかないという結論に至りました」と、瀬古氏は当時を振り返る。

8か所の中継局と5か所の子局を長距離無線LANで結ぶ

南伊勢町役場
防災課 防災係 係長(防災士)
瀬古 智秀 氏

 新たな災害情報伝達システム導入にあたり、衛星携帯電話などさまざまな通信方式を検討した。しかし衛星携帯電話は、試用段階でデータ通信が不安定になることがあった。「災害という非常時に使用する通信網としては不安がありました」と、瀬古氏は顔をしかめる。調査を進める中で、他の自治体でも安定的に運用をしているという評価を得たのが、4.9GHzの長距離無線LAN方式だった。そして最終的に選ばれた製品は、エイチ・シー・ネットワ-クスが提供する無線LANソリューションであるRADWIN 2000/5000だ。

 RADWIN 2000は、最大で見通し50kmの長距離、1対1で最大250Mbpsの高速通信を可能にし、RADWIN 5000は最長20kmの距離を1対Nで結ぶ長距離無線LANだ。4.9GHz帯の電波は直進性が高く遠距離まで到達し、さらに天候の影響を受けにくいことも特徴に挙げられる。
 2016年9月から始まった工事は、8か所の中継局と5か所の子局からなる大がかりなものだ。

 防災拠点である、南伊勢町役場南勢庁舎の基地局から発せられた電波は、浅間山に設けられた中継局を経て、神前浦中継局と龍仙トンネル中継局へと分岐する。浅間山中継局から神前浦中継局までは約23kmもの距離があるが、途中に電波遮へい物がないため、無中継で結んでいる。子局のある5か所は防災拠点と二次避難所となる。

 肝心の長距離無線LANの通信速度に関しては「想像の倍以上の速度が出ました。無線LANでここまでの速度が出るとは思っていませんでした」と設計・構築を担当した扶桑電通株式会社は、試験当時を思い返す。

 しかしこのシステムは、単に通信網を整備しただけではない。「災害対応のソフトも開発中です」と瀬古氏は、長期的な防災計画について語る。「従来の防災無線は行政側が一方的に情報を発信するだけでしたが、個人の携帯電話やスマートフォンから情報を発信できるソフトがあれば、精度の高い情報が集まります。例えば、避難所に非常食が欲しい、おむつが足りないといった声が多くあれば重要度の高い情報と判断でき、迅速に対応できます」と、町民の声を丁寧に吸い上げる制度作りに取り組んでいるのだ。

 すべての工事の完了は平成31年度に予定されており、防災拠点と二次避難所を合わせ、約20拠点を結ぶ通信網の整備が計画されている。本システムではIP電話による音声通信が行える。実際に音声通信を使ってみて驚いたのは、その音質の良さだという。「予想よりもクリアに聞こえることに感動しました。心配していた遅延も、ほとんど感じません」と、瀬古氏は音声を聞いた時の印象を語る。音質がクリアであると、通話相手の感情や周りの状況も音声を通じて把握でき、災害時の情報収集には強い武器となる。

 また、二次避難所は無料のWi-Fi®スポットとしても機能する予定だ。町民は各自でメールやSNSなどでの情報の発信や連絡を取り合うことができる。「二次避難所へ行けばWi-Fiがつながる、とわかっていれば、皆さんが集まります。自家用車の中で生活して体調を崩すといったリスクも低減できます。人が集まれば情報も集まり、知恵も生まれると考えています」と、瀬古氏は防災に対する思いを熱心に語る。

画像の配信・共有で災害時の適切な対応が可能に

 こうして整備された災害情報伝達システムは、データ通信なので音声だけでなく画像も送ることができる。沿岸に監視カメラを設置して、災害時の被害状況を確認することも計画中だという。
 今後の展望として、瀬古氏は「例えばドローンを飛ばして、被害状況を画像で確認することも考えられます。町民がスマートフォンで撮った画像を共有することもできますね。災害現場の画像を素早く確認できれば、より適切な対応ができます」と、その効果に期待をよせる。
 また、Wi-Fiスポットの拡充も視野に入れているという。「町民の皆さんに普段から使って親しんでもらうことで、災害時にも慌てることなくスムーズに使いこなすことができると考えているからです」と、常に町民の安全を第一に考えている姿勢を覗かせる。

 被災時にも安定して使用できる災害情報伝達システムがすべて完成すれば、南伊勢町は豊かな自然と共存しながら安心して暮らせる魅力溢れる町として、これからも発展していくだろう。

お客様情報

三重県度会郡 南伊勢町 様

URL:http://www.town.minamiise.mie.jp

 「安全・安心を実現し、希望を持ち誇れる南伊勢町」をスローガンに掲げる南伊勢町は、三重県南部の熊野灘に面し、伊勢志摩国立公園の一角を占める自然豊かな地に位置する。2005年10月に旧南勢町と旧南島町が合併して生まれた、人口約13,000人の町である。第一次産業が盛んで、網漁業や養殖漁業、柑橘類の栽培が広く行われている。

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