6GHz帯Wi-Fiの技術整理:
屋外利用を見据えたSPモードとAFCの考え方
更新日:2026-09-24
目次
6GHz帯Wi-Fiの概要と各種モード
6GHz帯Wi-Fiは、無線LANに新しい選択肢を加える周波数帯です。6GHz帯は、Wi-Fi 7を含む、次世代無線LANの重要な選択肢として注目されています。広い帯域幅を確保しやすく、同時接続が多い環境でも混雑を抑えた設計がしやすい一方、周波数が高いため直進性が強く、障害物の影響を受けやすい特性があります。
日本ではすでにLPI(Low Power Indoor)モードとVLP(Very Low Power)モードが利用されており、SP(Standard Power)モードは現在も制度化に向けた検討が進められています。
6GHz帯の注目される特徴
6GHz帯の大きな特徴は、広い帯域幅を確保しやすいことです。2.4GHz帯や5GHz帯と比べてチャネル設計の自由度が高く、同時接続が多い環境でも混雑を抑えた設計がしやすくなります。
一方で、6GHz帯は周波数が高いため直進性が強く、障害物の影響を受けやすいという性質があります。このため、アクセスポイントの配置やカバーエリアの設計が通信品質に直結します。
LPIモードとVLPモードの用途
LPI(Low Power Indoor)は、屋内利用を前提とした低出力モードです。日本では最大EIRP(Equivalent Isotropically Radiated Power:等価等方放射電力)200mW以下とされており、屋内Wi-Fiとして扱いやすい水準です。
VLP(Very Low Power)は、屋内外で利用できる超低出力モードです。6GHz帯において屋外利用を含めて使えるのはこのVLPであり、国内では最大EIRP 25mW以下という、LPIよりもさらに厳しい出力条件が定められています。屋外利用が可能ですが、ドローンのように空中に浮いている上空での利用は認められていません。
SPモードとAFCの用途
SP(Standard Power)モードは、6GHz帯を高出力で屋内外利用するための仕組みです。米国とカナダではすでに導入済みである一方、日本では現在も制度化に向けた検討が進められており、2026年3月に技術的条件案が示されました。
注:技術的条件案の詳細は、総務省「陸上無線通信委員会報告書概要案」(令和8年3月)をご参照ください。
SPモードの利用に際しては、既存無線局との周波数共用のため、AFC(Automated Frequency Coordination:自動周波数調整)システムの運用が前提とされています。
AFCは、6GHz帯のWi-Fi機器が既存の無線システムと干渉しないように、利用できる周波数と送信条件を調整する仕組みです。無線APの位置情報と既存の無線システムの情報を照合し、利用可能なチャネルと最大送信電力を算出します。無線APはAFCが返す条件の範囲内で送信し、運用中も必要に応じて条件を更新します。

5GHz帯との違い
5GHz帯の一部チャネルでは、DFSによりレーダー検知時にチャネル変更が発生する場合があります。これに対して、6GHz帯のSPモードはAFCによる事前調整を前提とするため、運用の考え方が異なります。
つまり、DFSのように、運用中にチャネルが切り替わるのではなく、あらかじめ利用可能な条件を決めてから使う、という点が特徴です。
無線LANの屋外利用可否と必要条件
| 周波数帯/ 区分 |
2.4GHz帯 | 5GHz帯 | 6GHz帯 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| W52 (5.2GHz) |
W53 (5.3GHz) |
W56 (5.6GHz) |
LPI (Low Power Indoor) |
VLP (Very Low Power) |
SP (Standard Power) |
||
| 屋外利用 | 〇 | △条件付き: 総合通信局へAPの登録手続きが必要 |
× | 〇 (上空を除く) |
× | 〇 (上空を除く) |
〇 ※ |
| DFS | 不要 | 不要 | 不要 | 不要 | 不要 | 不要 | 不要 ※AFCによる周波数調整 |
| 周波数帯/ 区分 |
2.4GHz帯 |
|---|---|
| 屋外利用 | 〇 |
| DFS | 不要 |
| 周波数帯/ 区分 |
5GHz帯 | ||
|---|---|---|---|
| W52 (5.2GHz) |
W53 (5.3GHz) |
W56 (5.6GHz) |
|
| 屋外利用 | △条件付き: 総合通信局へAPの 登録手続きが必要 |
× | 〇 (上空を除く) |
| DFS | 不要 | 不要 | 不要 |
| 周波数帯/ 区分 |
6GHz帯 | ||
|---|---|---|---|
| LPI (Low Power Indoor) |
VLP (Very Low Power) |
SP (Standard Power) |
|
| 屋外利用 | × | 〇 (上空を除く) |
〇 ※ |
| DFS | 不要 | 不要 | 不要 ※AFCによる周波数調整 |
※SPモードの利用条件、対象周波数、最大送信電力などは、今後の制度・運用条件によります
出典:総務省「無線LANの屋外利用/上空利用について」をもとに当社作成(一部追記・加工)
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/wlan_outdoor/index.htm
SPモードで想定されるユースケース
SPモードは、従来の屋内向けWi-Fiを単に屋外へ拡張するものではありません。AFC(自動周波数調整)により、設置場所ごとに既存無線局との干渉を確認し、利用可能なチャネルや最大送信電力を決定します。これにより、既存の無線システムと共存しながら、より広範囲・高出力の通信を実現できる点が特徴です。
SPモードが利用可能になれば、工場・物流施設のAGVや監視カメラ、キャンパスの屋外設備、プラント・港湾の監視、イベント会場や建設現場のネットワークなど、広い屋外エリアでの利用が想定されます。従来のWi-Fiよりも広範囲・高出力で通信できるため、アクセスポイントの設置数を抑えながら、屋外の機器や端末を安定して接続できます。
従来のWi-Fiでは、屋外や広域で利用する際に、電波の到達距離、遮蔽物、干渉、アクセスポイントの設置数などが課題となります。SPモードでは、AFCが既存無線局を保護する条件を計算し、場所に応じて使用可能なチャネルと出力を通知します。全国一律の条件ではなく、設置場所に応じて通信条件を最適化できることが、従来のWi-Fiとの大きな違いです。
SPモードは、携帯電話網や専用業務無線を置き換えるものではありません。Wi-Fiの柔軟性を保ちながら、より広い屋外エリアでの利用を可能にする新たな選択肢として位置付けられます。
6GHz帯の整理
5GHz帯では、各種レーダーとの干渉を回避するため、レーダー検知時にDFS機能を用いてチャネル変更をする必要があります。これに対して、6GHz帯のSPモードはAFCによる事前調整を前提とするため、運用の考え方が異なります。つまり、5GHz帯のように、運用中にチャネルが切り替わるのではなく、あらかじめ利用可能な条件を決めてから使う点が特徴です。
企業ネットワークの観点では、6GHz帯は「導入できるか」だけでなく、どのモードをどの用途に割り当てるかを考える段階に入っています。屋内はLPI、短距離の屋内外利用はVLP、将来的な屋外高出力利用はSPという整理を押さえることで、無線LAN設計はより実務的になります。
また、実際のネットワークでは、オフィスや学校、病院、ホテル、公共施設などの建物内に加え、複数のフロアや棟、敷地内の屋外エリアまで、さまざまな環境を一体的にカバーすることが求められます。そのため、家庭や小規模店舗向けの機器ではなく、組織内の建物・敷地全体を対象とする業務用アクセスポイントや、既存のネットワーク機器・管理システムと連携できるソリューションを、用途に応じて組み合わせることが重要です。
エイチ・シー・ネットワークスでは、6GHz帯をはじめとする次世代Wi-Fiの特性を踏まえ、利用環境に応じた無線LANの最適化に取り組んでいます。屋内の高密度通信から、複数の建物や敷地内の屋外エリアを含む広域ネットワークまで、Wi-Fi 7対応のアクセスポイントや屋外向け無線ソリューションなどを適切に組み合わせ、将来を見据えたネットワーク設計をご支援します。

