屋外で5GHz帯のWi-Fiは利用できない?
知っておきたい電波法のルールを解説
更新日:2026-03-13
- 無線LAN
目次
建設現場や農業での活用、野外イベント、さらには災害時の避難所整備など、屋内だけでなく屋外でもWi-Fi環境を活用するケースが増えています。Wi-Fiを利用すれば低コストかつスピーディーにネットワーク環境を用意できますが、屋外でWi-Fi環境を構築する際には屋内とは異なるルールが存在する点に注意しなければなりません。特に5GHz帯を利用したWi-Fi環境を構築する際には、電波法に準拠する必要があります。
本記事では、屋外Wi-Fiの導入時に必ず知っておくべき5GHz帯の利用ルールを解説します。
Wi-Fiの屋外利用における注意点
屋外Wi-Fiは、広大な農場でのセンサーデータ収集や建設現場におけるカメラ監視、イベント会場でのフリーWi-Fi提供など、さまざまな場面で活用されています。
屋外Wi-Fiの主なメリットは以下のとおりです。
- 低コスト:ケーブルの調達や敷設工事の費用が不要であり、有線ネットワークと比較すると構築・運用コストを抑えやすくなります。
- 広範囲での情報共有:従来の拠点間や敷地内での書類運搬や電話連絡が不要になり、ファイル共有やリアルタイム連絡が可能になります。
- 災害時のBCP対策:屋外Wi-Fi環境を構築しておけば、災害時や有線回線の障害時などにバックアップとして活用でき、事業継続が可能となります。
※参考記事:屋外無線LANで拠点間ネットワークを構築するメリット
一方で、屋外でのWi-Fi利用は直進性が高く広範囲に到達しやすいため屋内とは異なるルールが適用される点に注意が必要です。気象レーダーや航空レーダーといった人命や社会基盤に関わる重要な通信を妨害してしまう恐れもあり、日本では「電波法」にて利用できる周波数や出力、事前登録といったルールが定められています。

知っておきたい「5GHz帯のWi-Fi利用条件」とは
具体的に、屋外でのWi-Fi利用にはどのようなルールが設けられているのでしょうか。Wi-Fiでは2.4GHz帯や5GHz帯、6GHz帯といった周波数帯の電波が利用されますが、この中でも5GHz帯の電波は屋外で利用する際に条件付きの制限があります。
5GHz帯の屋外利用可否まとめ
5GHz帯のWi-Fiは、さらに5.2GHz帯(W52)、5.3GHz帯(W53)、5.6GHz帯(W56)の3つに分かれ、それぞれ屋外での利用可否が異なります。具体的には下表のとおりです。
| 帯域(チャンネル) | 屋外利用の可否 | 条件・備考 |
|---|---|---|
| 2.4GHz帯 (2400-2497MHz) |
可能 | |
| 5.2GHz帯 (5150-5250MHz) |
条件付きで可 | 「登録局」として登録申請が必要。 |
| 5.3GHz帯 (5250-5350MHz) |
不可 | 原則として屋内専用。 |
| 5.6GHz帯 (5470-5730MHz) |
可能 | 登録不要で利用可能だが、DFS機能の搭載が必須。 |
| 6GHz帯 (5925-6425MHz) |
可能※ | ※VLP(Very Low Power)モードでの利用時に限る。 |
5.2GHz帯を屋外利用する場合、事前に総務省総合通信局に「登録局」として登録申請を行う必要があります。利用できる場所についても同周波数帯で運用されている気象レーダーに影響を与えないように制限されています。
また、5.3GHz帯のWi-Fiについては屋外での利用は禁止されています。5.6GHz帯については登録不要で利用できますが、後述するDFS機能を搭載した機器を利用しなければなりません。
登録手続きの煩雑さを避けたい場合は5.6GHz帯を利用するか、屋外利用の制限がない2.4GHz帯や、近年開放された6GHz帯の利用も検討しましょう。
※参考:総務省電波利用ポータル「無線LANの屋外利用/上空利用について」

なぜこのようなルールが存在するのか
なぜ屋外ではこのようなルールが存在するのでしょうか。その理由は、5GHz帯がWi-Fi専用の帯域ではないためです。
5GHz帯は重要な公共インフラでも利用されている
5GHz帯は、Wi-Fiだけでなく気象レーダーや航空レーダーなど、重要度の高いシステムでも利用されることがあります。
もしWi-Fiの電波がこれらのレーダー波と干渉し、通信が途絶したりノイズが入ったりすれば、重大な事故や気象予測の誤りにつながりかねません。
屋外のみ5GHz帯の利用が制限されている理由
5GHz帯の屋外利用が制限されている理由は、その技術的な特性によるものです。
5GHz帯の電波は「直進性が高く、障害物に弱い」という特徴があります。屋内で利用する場合、壁や天井が遮蔽物となり屋外へ漏れ出る電波は減衰するため、各種レーダーや無線への干渉リスクは低くなります。一方で屋外では遮るものがないため、気象レーダーなどの重要通信に干渉する可能性があるのです。

押さえておきたい「DFS」とは
屋外利用が可能な5.6GHz帯などを利用する際に、電波法で実装が求められている技術がDFSです。DFSとはDynamic Frequency Selectionの略称であり、日本語では「動的周波数選択」を意味します。
DFSの仕組み
DFSを搭載したWi-Fi機器は、周囲の電波を常に監視し、レーダー波を検出した場合はすぐにそのチャンネルの使用を停止し、他のチャンネルへ移動します。
DFSによる監視とチャンネル移動は以下の流れで行われます。
- ①チャンネルを使用する前にスキャンを行い、レーダー波などとの干渉がないことを確認する。
- ②通信中も常に監視を行い、もし干渉が検出されたら直ちに電波の利用を停止する。その後30分間はそのチャンネルを使用しない。
- ③通信を継続するため、他のチャンネルに変更する。①と同様にスキャンを行い、レーダー波などとの干渉がないことを確認したうえで、通信を再開する。
DFSにより電波干渉のリスクを抑えられる一方で、レーダーを検知してチャンネルを移動する際に、移動先のチャンネルで干渉がないか確認するために最低1分間、通信が完全に遮断されてしまう点が課題となります。
停波時間を短縮する技術も
現在、このDFSによる停止時間を最小限に抑えるための技術も登場しています。例えばある手法では、複数チャンネルを利用して通信を行いつつ、干渉したチャンネルのみ利用を停止することで他のチャンネルを利用して通信を継続する仕組みが採用されています。
また、別の手法では5GHzの無線モジュールを2本用意したうえで、うち1つをチャンネルスキャン用として利用し継続的にスキャンを実施します。これにより、干渉が発生していないチャンネルを常に把握し、チャンネル移動時のスキャン時間をなくします。
これらの技術を備えた製品を利用することで、DFSによる通信断の影響を軽減できます。

4.9GHz帯(5GHz帯無線アクセスシステム)の利用終了について
最後に、屋外無線通信において重要なトピックとして「4.9GHz帯の利用終了」についてご紹介します。
4.9GHz〜5.0GHz帯を使用する、いわゆる「5GHz帯無線アクセスシステム」は、干渉が少なく長距離伝送が可能なため、自治体の防災無線や工場の敷地内通信などで利用されてきました。しかし、電波の有効利用と再編のため、以下のスケジュールで利用が終了することが決定しています。
・2026年3月31日:新規の設備設置が終了。
・2036年3月31日:既存の設備も含め、すべての運用が終了。
今から屋外無線システムの構築を検討している、あるいは既存の4.9GHz帯システムを利用している場合、今後は5GHz帯や6GHz帯、あるいはローカル5Gなどへの移行を計画的に進める必要があります。

まとめ
屋外Wi-Fiをうまく利用することで、ビジネスの効率化や利用者の利便性向上など、さまざまなメリットを得られます。一方で、特に5GHz帯を利用する際には電波法に定められたルールを守らなければならない点に注意しましょう。他の周波数帯を利用した製品の選択も候補となります。
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