ルネサスエレクトロニクス株式会社 様

次世代データセンター向け「HPE FlexFabric 12900Eスイッチシリーズ」
半導体設計業務を支える基幹ネットワークを100GbEで更新
高速・低遅延のみならず信頼性や運用性も向上

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ルネサスエレクトロニクス株式会社 様

ルネサスエレクトロニクス株式会社 様

ポイント

  • 10GbEから100GbEへの更新で高速・低遅延化を実現
  • スイッチの機能を駆使することで運用性も向上
  • あらゆる障害を想定し、ダウンしないシステムを設計

導入製品

企業のセキュリティネットワーク導入事例集

回路規模増大などの要因から
半導体設計のシステムインフラが逼迫

 ルネサスエレクトロニクス株式会社(以下、ルネサス)は、MCU(Micro Control Unit)やSoC(System on Chip)をはじめ、アナログやパワー半導体などを取り扱う大手半導体メーカーだ。日立製作所、三菱電機、NECの半導体部門につながる技術的系譜にルーツを持つ。近年では、米国のアナログ半導体メーカーであるIntersilやIntegrated Device Technology(IDT)を相次いで買収。経営統合や子会社化を通じて技術基盤やポートフォリオのさらなる拡充・強化を図っている。
 「IntersilおよびIDTとの統合により、インフラ、データセンターなどデータエコノミー関連分野への事業領域を拡大するとともに、産業・自動車分野でのポジション強化を図っています」と、マスク・EDAインフラ管理部 部長の前床 和行氏は説明する。
 半導体製品においては、標準品だけでなく顧客ごとの要件に合わせ個別に設計するカスタム品も多いことから、マスクやEDAのインフラは常に負荷が高い。顧客ニーズに合わせて次々に新たな半導体を設計しなければならないうえに、その半導体は微細化が進み、回路規模が年を追うごとに増大し続けているため、設計データの量も著しく増え続けている。また、その設計データを処理するサーバーにも負荷がかかっていた。
 「半導体設計環境は、設計工期を少しでも短縮するために高速処理が求められており、仮想サーバーは使わず、ベアメタルサーバーで高速処理を実現しています」と説明するのは、マスク・EDAインフラ管理部 EDA基盤管理課 課長の宮沢 タマミ氏。
 「当社のサーバーセンターでは、重要な財産である設計データをファイルサーバーに集約し、データが損なわれないよう重要度に応じた複数のバックアップサービスを用いて管理しています。データ処理を担う各サーバーは、このファイルサーバー上の設計データにネットワークを介してアクセスするわけですが、ベアメタルサーバーを使っているため設計環境を変更するたびにポートをつなぎ変えるなどの物理的作業が発生していました」(宮沢氏)
 サーバーセンターは、広域災害への備えとして東京および大阪の2拠点をWANで結んだ構成となっている。データ量の増大は、WANをはじめとするネットワーク環境にも影響を及ぼしていたという。
 「ファイルサーバーのプライマリーとバックアップの間で実施しているデーリーの差分バックアップは、所要時間が長引くようになり、SLAを維持できなくなりつつありました。EDAツールが稼働するサーバーも回路規模増大に伴い、より大量のCPUリソースが必要となって台数が増え、ファイルサーバーとの通信ポートが枯渇しつつありました」と、EDA基盤管理課主任技師の水野 広史氏は説明する。

ネットワーク機器更改に向けて
提案内容、品質、コスト、安心感の観点でベンダーを選定

 2019年、サーバーセンターで稼働するネットワーク機器の耐用年数が迫る中、ルネサスはこれまでの課題を踏まえネットワークの高速化を検討。その目玉となるのが通信規格で、従来の10GbEに代わり最新の100GbEを採用するという計画だった。
 まずは、いくつかのベンダーに要件を提示して提案を募り、その内容や費用感などを評価した。
 「一つは、長期利用を見据え、必要ポート数を考慮した拡張性を有することです。また、障害発生リスクを最小化すると同時に、高速・低遅延のネットワーク設計を実現するためにも、極力シンプルな構成を採用したいと考えていました。さらに、能力増強と耐障害性向上の両方の観点から、従来までのActive-Standby構成でなく、Active-Active構成にすることにしました」(水野氏)
 この要件を受けて提案を寄せたのが、エイチ・シー・ネットワ-クスだった。EDA基盤管理課 プリンシパルスペシャリストの上山 欣也氏は、選定理由について以下のように語る。
 「決め手となった点は、数多くの要件を提示したにも関わらずコスト面で優位だったことです。当社へのネットワーク機器導入、構内LANの構築・運用実績があることも安心感につながりました」
 こうして2019年秋にネットワーク機器更改プロジェクトが始動。重要度の高いシステムの完全停止を伴う機器更改だけに、周到な準備は必須であり、特にネットワーク機器を切り替える際のリスク対策を強く求めたという。
 「もしコアスイッチにトラブルがあれば、設計環境が完全に停止してしまいます。リスク対策として第一に依頼したのは、安全で確実な移行スキーム、更新時のサーバーセンター停止期間最小化や切り戻しなどの準備でした。そのほか、運用移行後に万が一障害が発生した場合でもシステム全体の停止に波及させないよう、局所的な影響にとどめる構成とすることも条件でした」(上山氏)
 ネットワーク構築では、コアスイッチに「HPE FlexFabric 12900Eスイッチシリーズ」を採用。複数の物理スイッチを仮想的に1台のスイッチとして扱える「IRF(Intelligent Resilient Framework)機能」を活用することで、スイッチの設定や運用が容易になるといったメリットが得られたという。
 また今回のプロジェクトでは、新たなアクセス管理手法にも挑戦。
 「半導体設計業務は、当社だけでなくさまざまなビジネスパートナーと共同で行っているため、それぞれの環境でアクセスできてしまわぬよう、適切なアクセスコントロールが必須でした。同時に、個々の設計プロジェクトは状況に応じて必要リソースが変動するため、それぞれの環境のリソースを容易に変更できるようにしたいとも考えていました」(水野氏)
 以前のネットワークでは、セキュリティロールに応じたアクセスコントロールを、ファイアウォールで実施していた。新たなネットワークでは、セキュリティロールを考慮した体系へと社内IPアドレスを刷新し、レイヤー3スイッチによるアクセスコントロールの実施を計画。また、セキュリティロール間のサーバーの移動やネットワークの変更も、物理的な接続変更を伴わず行えるようにDyanamicVLANの採用も検討した。
 「今回の設計ではL3-L2スイッチ階層のフラットな構成となり、障害発生リスクの最小化や、高速・低遅延を実現できました。今までの構築実績もあり、スムーズにネットワーク設計からサービス開始までの準備をお任せできたと考えています」(水野氏)

高速・低遅延なネットワークを構築 設計業務の工数と時間の削減に寄与

 ネットワーク環境を更改したことで、さまざまな効果が得られたという。まずは高速・低遅延化などにより、設計業務に使用するEDAツールの実行時間短縮だ。例えば、物理検証ツールの実行時間が最大で35%短縮でき、設計工期短縮に寄与すると見込まれている。またファイルサーバーのバックアップ時間も、SLAを維持できるようになったとのことだ。
 「物理検証ツールの実行時間短縮は、当初の設計要求を満たしているようです。また、ネットワークトラフィックの要因と推定されるGUIツールのレスポンス悪化に関するクレームも、更改後には聞かなくなりました」と、EDA基盤管理課の伊丹 聡氏は説明する。
 「昨今のEDAベンダーとクラウドベンダーが密接に絡んだ設計環境を将来利用することを見据えて、オンプレ環境と他社クラウド環境との蜜結合のあり方において、セキュリティを担保したうえでのネットワーク設計も重要なファクタの一つになると考えています。今後もエイチ・シー・ネットワ-クスには、将来の設計環境の多様化に備え、当社のニーズに合致するソリューションの提案を期待しています」(宮沢氏)

お客様情報

ルネサスエレクトロニクス株式会社 様

URL: https://www.renesas.com/jp/ja

日立製作所、三菱電機、NECの半導体部門をルーツに持ち、研究開発から設計・製造、販売やサービスまでの事業を一貫して手掛ける大手半導体メーカー。マイコンやSoC、アナログ、パワー半導体など幅広い製品ポートフォリオを持ち、オートモーティブ、インダストリアル、インフラ、IoTなどさまざまな領域で業界屈指の半導体サプライヤーとなっている。連結従業員数は2020年12月末時点で18,753名。

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